- 最終更新日:2024.05.09
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大規模修繕工事で必要な5つの工事内容を徹底解説
大規模修繕工事は、建物の経年劣化に対応するための工事です。新築された建物は、年月が経つにつれ外壁をはじめ設備などが劣化していくことは避けられません。そのため、定期的な点検を行い不具合や異状の早期発見に努める必要があります。大規模修繕工事も、定期的に行うことで住む人の安全や建物の劣化を防止し、機能を回復させることができるのです。この記事では、大規模修繕工事の工事内容や費用などを詳しく解説していきますのでぜひ参考にしてください。
Contents
大規模修繕工事とは?
大規模修繕工事は、定期的に行うよう推奨されている建物を維持するための工事です。建物の状態により実施時期に差はありますが、一般的には10~15年位ごとに工事を行うマンションが多いようです。マンションや戸建て住宅などの建物は、風雨などの外的要因や経年により住んでいるうちに色々な個所に不具合が表れてきます。大規模修繕工事の第1の目的は、こうした劣化症状を直し、建物の状態を新築時まで戻すことにあります。たとえば、外壁のコンクリートにできた0.3mm程度の小さなひび割れでも、雨水は徐々にコンクリート内部に浸み込んでいきます。そして、長い時間をかけて建物全体へのダメージにつながっていく場合もあるのです。定期的に点検を行い、劣化症状が出ている個所を早期に発見して対処するのは、建物の寿命を守る上でも大切なことです。
大規模修繕工事では、外壁の補修のほかに鉄部の塗装や防水工事、設備関連の工事など共用部を中心に実施します。小さな異状を見逃さないために、工事前には詳しい調査が欠かせません。外壁の場合は、ひび割れのほか、タイルやモルタルが浮いている箇所がないか、コンクリート内部の鉄筋に腐食がないかといった項目を確認します。また、屋上であれば、防水塗膜の破断や浮き、漏水の有無などを確認します。ほかにも、バルコニーや外廊下、エレベーターなど、共用部を中心に、1箇所、1箇所、実際に作業員が現場で状態を確認し、補修をしていきます。
大規模修繕工事の工事内容
大規模修繕工事はその準備だけでも1~2年位、工事の完了までだと2~3年位を要する大きなプロジェクトです。準備の第1段階として、まずは建物の状態を確認する建物診断を実施します。そして、その結果を受けて工事時期や工事範囲の決定、そして工事の内容や材料、工法などを選定する工事仕様の検討、そして総会の決議を経てようやく工事を実施することができます。ここでは、外壁の塗装やタイルの補修、防水工事といった実際の大規模修繕の工事内容について詳しく見ていきましょう。
仮設工事
仮設工事には「直接仮設工事」と「共通仮設工事」があります。
「直接仮設工事」では、大規模修繕工事を行うために必要な足場の設置を行います。建物の周りに足場を建て、その周囲をメッシュシートで覆います。工事中に塗料が飛散したり、資材などが外部へ落下するのを防ぐためです。また、工事中も安全に通行ができるよう出入口や通路の頭上には防護棚を設置したり、侵入者対策にカメラやセンサーライトを取り付けたりします。実際の工事に入る前には、生活される方や建物周囲の安全を守るため、この他にもさまざまな安全・防犯対策を講じます。
「共通仮設工事」では、主に事務所や作業員の休憩所、資材置き場、仮設トイレなどの仮設設備を設置します。仮設設備で必要な電気や水道などのインフラやインターネット環境、事務所で必要な電話・コピー機・パソコンなどの機器を備える工事も含まれています。
下地・タイル補修
下地補修は、コンクリートの躯体部分に発生したひび割れなどの劣化部分を補修する工事です。はじめに建物の天井や壁などを目視や打診により調査し、状態を確認します。同じひび割れでも気温や乾燥、湿度の変化により発生したものと、構造に由来しているものでは補修の方法が変わってきます。代表的な補修方法としては、ポリマーセメントペーストやエポキシ樹脂をひび割れに充填する工法があります。また、状態によってはひび割れに沿って溝を作りシーリング材を充填する工法もあります。内部の鉄筋まで錆が回っている場合には、周囲のコンクリートも弱くなっていますので撤去をし、鉄筋の錆を除去したうえで埋め戻しを行う大掛かりなものになります。これらはひび割れの補修方法ですが、他の劣化症状の補修においても、下地の良否は仕上がりやマンションの寿命にも影響します。そのため、補修の際には症状を見極め、適切な補修方法を選択し、施工ができる知識と経験が求められます。
また、タイル貼りのマンションでは、下地となるコンクリート部分に加え、タイルの状態の確認も必要です。タイルにはひび割れや欠損に加え、タイルが下地から浮いてしまう「浮き」という症状があります。浮きが進行すると壁からタイルが剥落し、そばを通行する方に危害を及ぼしかねませんので注意が必要です。タイルの浮きには接着剤を注入し、下地との付着力を補う工法が一般的ですが、範囲が広い場合や下地に手直しが必要な場合には貼り直しを行います。タイルを貼る際には、下地となるコンクリート面を目荒らししておくことで、タイルを貼った後もはがれにくくなります。
シーリング工事
シーリング工事はサッシ廻りや外壁、タイルの目地などに使用されているシーリング材を新しく打ち替える工事です。ゴム状のシーリング材は、劣化すると硬くなり防水性や気密性が徐々に失われていきます。シーリング材が劣化し隙間ができれば雨などが建物内部へ入ってしまい、漏水が発生したり、建物自体の劣化も進むことになってしまいます。シーリング材は、接合部分の材質に合った種類を選ぶことが大切です。外壁やサッシ廻りのほかにも手すりの支柱などシーリング材は色々な所に使われているので、工事の際にはそれぞれの施工箇所に合ったものを使います。シーリングは10~15年が経つと打ち替えの時期になりますが、工事を行う際には足場が必要になりますので、大規模修繕工事の際に一緒に施工をした方が経済的です。
塗装工事(外壁・鉄部)
主な塗装工事には「外壁塗装」と「鉄部塗装」の2種類があります。どちらも外観の美しさを保つためだけでなく、塗装工事をすることによって風雨や汚れからコンクリートや鉄を保護する効果も得られます。塗装前には汚れや錆を除去し、目的に応じた塗装材を使って仕上げをします。
外壁塗装工事では、まず塗装面の状態を確認するため、下地と塗膜の付着力を検査します。付着力が一定以上の場合には、上から塗料を重ねますが、付着力が弱くなっている場合には、既存の塗膜ごと剥がれてしまうのを防ぐため、一度、塗膜をはがして塗り直しを行います。また、塗装材にはシリコン塗料やフッ素塗料などが使われますが、適切な量を均一に塗ることも塗料の効果を得るためには大切な施工のポイントです。外壁が塗装の場合、既存の色を変えることも可能な場合があるので、新たな気分で生活できるというメリットもあります。
鉄部塗装工事では、錆や腐食といった鉄の性質に対応するため錆止め塗装を施します。対象となるのは、鉄製の扉や階段、メーターボックスの扉などです。サンドペーパーなどを使い丁寧に錆を除くのが大切なポイントで、この作業を丁寧に行うことで錆びの再発を防ぎ、塗料との密着度を高めることができます。下処理をした鉄部には錆止め、中塗り、上塗りと塗装を重ね保護力を高めます。
防水工事
建物の劣化が進行するのを抑えるためには、雨などの水分がコンクリート内部へ侵入するのを防止することが重要です。防水工事では、屋上や外階段、バルコニーなど風雨にさらされている床面を中心に防水処理を行います。また、屋上やルーフバルコニーは、劣化が進むと居室内への漏水に繋がりやすい箇所となるため、住人の生活空間を守るためにも定期的なメンテナンスを行いましょう。屋上の防水工事では、アスファルトやウレタン、塩化ビニル樹脂シートなどの防水素材を使用します。それぞれに特性がありますが、補修の際には、劣化の状況や現在使用されている防水層との相性を見て素材や施工の方法を選定します。
開放廊下や外階段、バルコニーについては、塩化ビニル樹脂シートやウレタン防水が多く用いられています。塩化ビニル樹脂シートは豊富なカラーやデザインがあり、選択するデザインによって印象の変化を楽しめます。また、バルコニーの場合は、防水工事をする際に足場が必要になりますので、大規模修繕工事の際に一緒に施工をした方が経済的です。
マンションの大規模修繕工事のポイント3つ
ここでは、マンションの大規模修繕工事で押さえておきたいポイントを3つに絞って解説していきます。
1.優先順位をつけて資金を効果的に使う
同じ築年数、同じ規模のマンションでも、立地や形状、使用状況によって建物に現れる劣化の症状は様々です。工事をする前には建物の状態をよく確認し、緊急性がある箇所はどこなのか、補修を先に延ばしても問題ないのか専門家に診てもらいましょう。対応の優先順位を考慮して工事の内容を組むことで、より充実した工事仕様となり、効果的に積立金を充てることが可能になります。
2.機能改良による居住性の向上
大規模修繕工事の第1の目的は、劣化症状を直し建物の状態を新築時まで戻す機能回復にあるとお話ししましたが、機能改良も暮らしやすさにつながる大きなポイントです。近年ではバリアフリー化や防犯対策の強化、宅配ボックスの設置など、新築時にはなかった設備を要望されるマンションも増えてきました。時代や住む方によっても求められる機能は変わってきます。上手く取り入れることで、暮らしやすさや価値の向上に繋がります。
3.建物の将来設計
大規模修繕工事では、管理組合でもたくさんの意見交換が行われますが、ぜひこれを機に建物の将来像についても考えてみましょう。例えば、「築40年の建物をあと10年で取り壊す」のと「築40年の建物をあと30年持たせる」のでは、工事の方向性も資金の使い方も大きく変わってきます。マンションはたくさんの方が共同で管理する建物ですので、管理組合で大きな方向性を共有できていることは維持管理の上でもプラスに働きます。
大規模修繕工事の費用
大規模修繕工事の費用は建物の大きさや形状、補修の内容、工事の範囲などによっても異なりますが、一般的に数千万~億単位の費用がかかります。また、通常の補修工事に加え、耐震補強工事やサッシの交換、エントランスの改修などのバリューアップ工事、給排水管の工事などを実施する場合には、さらに予算を上積みして準備をしておく必要があります。
大規模修繕工事の費用はマンション毎に作成している「長期修繕計画」をもとに算出される修繕積立金を、区分所有者が毎月積み立て、大規模修繕工事に備えます。資金に関して言えば、新築時から準備が始まっているというわけです。長期修繕計画はマンションの大切な資金計画です。そのため、長期間見直しがされていない、必要な工事が予定に入っていないとなると、資金が足りず必要なメンテナンスが行き届かなくなります。いざという時に慌てることのないよう、長期修繕計画は定期的に見直しを行い、収支の状況によっては早めに対応策を検討しましょう。
管理組合の関わり方
大規模修繕工事にはたくさんの専門家が関わりますが、主役はあくまでも管理組合の皆様です。理事会や修繕委員会が中心となって工事を進める場合が多いですが、住んでいる皆様の協力もかかせません。定期的に必要な修繕を行うには、多くの費用と時間がかかります。大規模修繕工事で自分たちの資産の価値を維持するという意識をもって、協力し合うのが望ましい形です。また、大事な資産を守るためには、将来的にも管理組合が十分に機能することが大切になってきます。大規模修繕工事を機に組合内の意思決定やコミュニケーションが格段に良くなったという例もありますので、ご自身の資産を守るためにもぜひ積極的に参加をしましょう。
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