最終更新日:2023.12.26
修繕積立金 長期修繕計画 大規模修繕 

修繕積立金とは?管理費との違いや相場を徹底解説!

修繕積立金とは?管理費との違いや相場を徹底解説!

分譲マンションを購入すると、管理費と共に、「修繕積立金」を毎月積み立てていくことになります。入居者(区分所有者)にとって修繕積立金は月々の負担にはなってしまいますが、マンションの共用部分の修繕・維持管理、そして不動産としての資産価値を維持するために、とても大切な役割を果たしています。

本記事では、修繕積立金の役割や、管理費との違い、相場などについて解説します。

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修繕積立金とは?マンションの修繕・維持管理のための積立金

共用部を維持管理するための修繕積立金

修繕積立金とは、分譲マンションの外壁・屋根・エントランス・エレベーターなどの共用部分を中心に修繕工事や維持管理を行うため、入居者(区分所有者)全員が負担する積立金を意味します。

マンションの共用部分とは、特定の入居者だけでなく、全員が日常的に使用する場所を指します。対して、それぞれの入居者が個別に使用する居室などを専用部分といいますが、専有部分はマンション管理組合が実施する修繕工事の対象にはなりません。

修繕積立金は2年、3年先の修繕工事のためだけではなく、15年や30年先のスパンを見すえ、長期間にわたって安心安全に住まいを維持するために積み立てられます。

こうした修繕・維持管理に必要な費用を一括で集めてしまうと、区分所有者の金銭的負担が大きくなるため、毎月少しずつ長期に渡って費用を集め、積み立てていきます。管理費、住宅ローンと並び、物件購入後も入居者が支払い続ける必要のある費用の1つです。

なお、原則として管理費や修繕積立金は返金されません。マンションを売却しても、積み立てたお金は返還されないため注意が必要です。

修繕積立金の金額は「長期修繕計画」に基づいて設定される

修繕積立金の金額は、一般的に国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」に基づき、分譲事業者が作成する「長期修繕計画」によって決定されます。[注1]

長期修繕計画作成ガイドラインでは、修繕積立金の計算方法を原則「均等積立方式(積立方式)」とし、長期修繕計画の期間中の修繕積立金の金額が一定(均等)になるよう求めています。たとえば、向こう30年の長期修繕計画を作成する際は、修繕工事費や設備交換工事費などその期間に予定される工事費用の総額を見積り、月々の金額に均して修繕積立金の額を決定します。
長期修繕計画について
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マンションによっては、均等積立方式ではなく「段階積立方式」を採用するケースもあります。こちらはあらかじめ期間を決め、月々の修繕積立金を段階的に増やす計算方式です。入居した当初は修繕積立金の負担が他のマンションよりも軽いことが多いですが、築年数とともに金額が上がり、負担も増えていくため一長一短のある方式です。

なお、長期修繕計画は一度作成したら終わりではありません。建物の使用状態や必要な工事の見直し、収支の状況などにより定期的に見直すことが大切です。国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」によると、長期修繕計画を「5年毎を目安に定期的に見直している」マンション管理組合が、全体の56.3%に達しています。[注2]

そのため、修繕積立金の金額が変わらない均等積立方式であっても、物価の上昇や想定外の突発的な工事が発生したなどの理由により、積立金の不足が予測される場合には、計画内容の見直しや修繕積立金の増額の検討が必要なケースもあります。一般的に、長期修繕計画は5年後のの見直しが望ましいとされています。

[注1] 国土交通省:長期修繕計画作成ガイドライン
https://www.mlit.go.jp/common/001172736.pdf</a >

[注2] 国土交通省:平成30年度マンション総合調査結果
https://www.mlit.go.jp/common/001287412.pdf</a >

修繕積立金は何に使われる?代表的な3つの使い道

修繕積立金には、大きく分けて次の3つの使い道があります。

1. 定期的に行われる大規模修繕工事

まず、マンションではおよそ12~15年位を1区切りとして、大規模修繕工事が行われます。小さな保守・メンテナンスは日常的に行われていますが、それでも年月を重ねるうちに、建物の至るところにダメージが蓄積します。マンションの周りに足場を建てて外壁補修や防水工事など行い、大規模なメンテナンスを行うことで、建物の機能を回復させます。入居者の安全・快適な生活を守り、マンションの資産価値維持に貢献します。
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2. 事故や災害の際の突発的な修繕工事

定期的な修繕工事のほかにも、台風・地震・津波などの自然災害により、マンションに被害が生じるケースがあります。こうした突発的な修繕工事についても、毎月の修繕積立金から工事費用の一部を捻出します。

3. マンションの共用施設の改善や改修など

マンションの共用部分の改善・改修を行う際も、修繕積立金から工事費用が拠出されます。たとえば、駐輪場や駐車場の増設・移設や、集合ポストの新規取り替えなど、入居者の生活の質の向上のために工事の必要性が認められるケースです。

また、1981年以前に建てられた旧耐震マンションの場合、耐震診断耐震補強工事を検討されている管理組合も多いと思いますが、その費用の原資となるのも修繕積立金です。

修繕積立金と管理費はどう違う?管理費との使い道の違い

管理費と修繕積立金の違いは使い道!

修繕積立金と管理費の違いは、それぞれの積立金の使い道にあります。
管理費も修繕積立金も、マンションの専用部分ではなく、共用部分のメンテナンスのための積立金である点は変わりません。

ただし、修繕積立金が長期修繕計画に基づき、マンションの修繕・維持管理のために使用されるのに対し、管理費は主に以下に挙げるような、日常的な管理項目に対して使用されます。

・軽微な日常修繕、共用設備の維持管理の費用
・管理会社等への業務委託費
・共用部分の火災保険料、地震保険料等の損害保険料
・管理員人件費、備品や通信着、事務費、清掃費、ごみ処分費等
・専門家の顧問料
・組合運営に要する費用

たとえば、廊下やエントランスの電球が切れたときの取り替え費用や、中庭・エントランスの植栽の手入れに要する費用、また、共用部分の水道光熱費なども管理費から捻出されています。

このように管理費は入居者の日常生活を快適に維持するためのメンテナンス費用です。
一般的な分譲マンションでは、修繕積立金と管理品を合わせ、月々2~3万円ほどの積立を行っています。

 

修繕積立金の相場は?国土交通省の調査を元に解説

国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」によると、管理費・修繕積立金の平均額は次の通りです。[注2]

1戸あたりの平均額
管理費(駐車場使用料等を含む) 平均 1万5,956円
単棟型 1万6,213円
団地型 1万4,660円
管理費(駐車場使用料等を除く) 平均 1万862円
単棟型 1万970円
団地型 1万419円
修繕積立金(駐車場使用料等を含む) 平均 1万2,268円
単棟型 1万1,875円
団地型 1万4,094円
修繕積立金(駐車場使用料等を除く) 平均 1万1,243円
単棟型 1万1,060円
団地型 1万2,152円

実際にはマンションの規模や付随設備、築年数などによっても差はでてきますが、駐車場使用料棟をふくめると相場は1万2,268円、除外すると1万1,243円程度となっています。

修繕積立金が値上がりするケース

修繕積立金の相場は前述の通りですが、積立金額が上がるケースもあります。

まず、「均等積立方式」ではなく「段階増額積立方式」で修繕積立金を支払う場合、初年度の設定金額は低いものの、一定の期間ごとに修繕積立金が増額されます。

また、そもそも初期設定金額が低すぎるケースもあります。放置しておくと、いずれ修繕積立金が足りず必要最低限の補修工事すら実施できないということになりません。

修繕工事やメンテナンス費用の相場の上昇や耐震補強工事やバリアフリー化など長期修繕計画になかった工事を新たに実施する場合も、当初の想定より費用が多くかかってきます。

新築当時に作成した長期修繕計画も時間の経過とともに、現状とのずれが発生してきます。途中途中で必ず見直しを行い、収支の状況を必ず確認しましょう。

修繕積立金はマンションを長く安全に使っていくための大切な資金です。不足が想定される場合は計画内容を精査し、それでも足りない場合は専門家にも相談し、一時金の負担や積立金の値上げの検討も含め速やかに事態に沿う内容にしていくことが大切です。

 

修繕積立金を滞納したらどうなる?2つのデメリット

修繕積立金を滞納した場合は、次のようなデメリットが考えられます。

管理組合による督促・訴訟のリスク

管理費や修繕積立金を滞納している場合は、まず管理会社を通じ、管理組合による督促が行われます。滞納金額が多い場合は、さらに訴訟へ発展する可能性もあります。滞納歴が短いケースであっても、管理組合側は簡易裁判所での少額訴訟が可能なため注意が必要です。

マンションが売れにくくなる

将来的にマンション売却を考えている場合は、修繕積立金の滞納が不利に働くケースがあります。
原則として、修繕積立金を含めた資産は、売主から買主に引き継がれます。マンション購入時の契約内容によっては、修繕積立金の滞納といった「負の資産」も、次の所有者に継承される可能性があるのです。
さらに、不動産仲介業者は修繕積立金の滞納について買主に説明する義務があるため、売買取引が成立しづらくなるというデメリットがあります。

修繕積立金の役割を理解してしっかり備えよう

マンションの修繕積立金は管理費と違い、共用部分の大規模修繕工事やメンテナンスのための資金です。月々の修繕積立金は少なからず負担になりますが、一方で修繕積立金が不足し、大規模修繕工事の原資を賄えないマンションでは、必要な修繕ができず生活の質の低下や資産価値が大幅な減少といた事態を招いてしまうケースもあります。入居者の安心・安全な暮らしを守り、マンションのの資産価値を維持するために、修繕積立金は非常に大切な役割を担っています。役割をしっかり理解して、大切に使っていきましょう。

修繕積立金-よくある質問

大規模修繕工事の準備をはじめましたが、修繕積立金が足りないことがわかりました。どうすればいいですか?
まずは、工事内容の精査が必要です。緊急度の高い工事を優先して、もう少し様子を見ても大丈夫という箇所は工事時期を見直すという方法もあります。また、管理組合内での議論や丁寧な意見調整は必要ですが、一時金の徴収や借り入れを受けるといった選択肢もあります。ただし、いずれも修繕積立金が足りていないことに対しての根本的な解決策ではありません。将来に向け、修繕積立金の改定を含めた長期修繕計画の見直しを早めに実施していただくことをお勧めします。
修繕積立金はどのタイミングで見直しが必要ですか。
修繕積立金の金額は、長期修繕計画に基づき算出されるとお話しましたが、この計画上、きちんと収支のバランスが取れているようであれば、金額改定の必要はないといえます。ただし、長期修繕計画については5年ごと位で定期的に見直しを行い、現状に即した内容がきちんと反映されるよう確認を行いましょう。
また、修繕積立金の残額が大きく減るのが大規模修繕工事の実施年です。工事の後には長期修繕計画の内容を見直し、無理が生じていないか点検しましょう。もし、修繕積立金の不足が懸念されるようであれば、金額の改定等も含め将来に向けた対応策を検討していく必要があります。

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